高木俊子のきもの談義 和裁 その味のある仕立て

高木俊子のきもの談義

 【 和裁 その味のある仕立て 】

あらゆる和服の裁縫、つまり「積もり方」「裁ち方」「標しつけ方」「縫い方」等は全てにわたってそのものの形に仕立てることです。和裁は製作中の緊張感で集中力が高まり熱中します。

内容は「基礎及び単衣」「袷及び綿入れ」「羽織」「コート及び作業服」「帯及び袴」「襦袢及び寝具」「特殊物」等、私の手元の書でも400ページ近いものが7冊あります。

限られた時間のなかでこれらすべてを網羅することは出来ませんが、現在多くの需要のあるものに対しては和服裁縫の伝統を活かしその本質を究明し、時代に適応した製作を行いたいと念じて居ります。

あらゆる被服は適応する資材によって人口的に製作される造形体で、他の造形体と異なり人体に着装されてはじめて完成します。ここで、きものの場合を考えてみましょう。

現在一般にきものと呼ばれている反物は、非常に多くの工程を経て私たちの目にふれ販売されております。ここから人体に着装される橋渡しをするのが和裁です。

つまり、人が袖を通すことが出来る形に製作するのです。きもの全体の工程からしますと末端の作業ではありますが非常に重要です。工芸品的価値のある染めや織の反物も製作され、人体に着装されることによつて完成されます。

素朴な手業ではありますが裁縫は技術の練達のみでなく、精神と技術との一致によって成立します。製作に当っては裁縫品に全精神が打ち込まれていないときは、生気を持たない製作品となります。いわゆる味の無い仕立てになります。

仕立てる人が裁縫の真意義に目覚め、不断の研究と努力を惜しまず、無限の興味を持って裁縫の知識を修得し、技術の練磨向上を計り、応用を自在にし、多くの真理を発見しながら進んでゆくことです。

私は着用した時に安心感が得られ、動作をしても着くずれない仕立てを心掛けています。同じ人でも生地によつて要所要所の寸法を変える「帯」はぴたっと体に纏いつく様に仕立てます。特に襦袢、きもの共、襟つけ、体格に依る身幅の寸法のとり方は一人一人お目にかかって、対話をしながら決めていきます。

特に女性の場合太った方、男性は体格体型に充分配慮して仕立てます。又、古い品の洗い張り、仕立て替え、りフォーム等、生地の繰り回しも行い経済性にも配慮し、着用者との信頼感を大切にします。

つづく・・・

高木俊子きもの学院  高木俊子

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